真夜中の御菓子

 ある日、本紙編集室に突然送られてきた宅配便。送り主は、二年半前に友人のつてで本紙創刊号に投稿してくれたきり、行方知れずとなっていた謎の男からだった。
 包みを開けると、黄金色に輝く豪華な箱。「V・S・O・P」の文字が読みとれる。ただし箱は、とても軽い。それを開封する前に、添付された手紙を読んでみる。
 「箱」の内容は、「パイ」である。浜松に近い、掛川市からのもの。つまり、「夜のお菓子・うなぎパイ」だ。いや、ただのうなぎパイではない。「真夜中のお菓子・うなぎパイV・S・O・P」だ。怪しい。さらに、締めの言葉が、効いている。
 「私も食べていないので味のほうは、良く知りませんが、名物にうまいものなし。ということで。」
 って、おい‥‥。私は、この言葉がいたく気に入ってしまった。これだけで、中身に対する好奇心は、否が応にも増すではないか。
 さっそく一枚食べてみる。開封したとたん、ほわ〜んと拡がるブランデーの香り。これは、ブランデー入りの「うなぎパイ」なのだ。う〜ん、アダルト(?)。味の方は‥‥、うまい。もともと私は「うなぎパイ」が好きなのだ。これで精力がつくとは、とても思えんが。
 ブランデーの香りが嫌いではなくて、「うなぎパイ」が好きな人には、お薦めだ。味はともかく、話のネタには絶対なる。何より、この虚仮威しのパッケージがいい。
 ちなみに周囲の人たちにお裾分けしたところ、皆に好評だった。言っておくが、決して「処分」したわけではない。

(天野千晴)


目次に戻る