<僕>は、旅回りのバンドマン。かつてドラッグに溺れるペシミストだった彼は、とある街で<ベランジェール>という名の少女に出会う。決して恵まれているとはいえない境遇にありながらも、つねに前向きに生きる少女との交流が、彼を変えていく。
 しかし、元来の皮肉屋である彼の言動から、いつか二人の間は、ぎくしゃくしたものになってしまう。関係修復を願う<僕>だったが、それもかなわず、次の旅に発つ日が来てしまった。
 それから、数年後――。

P.S. Dear Berangere
Waiting days again

親愛なるベランジェール、お元気ですか。
最後にお会いした日から、何年が過ぎたでしょう。

 夏の喧噪が影をひそめて
 珈琲カップに陽炎が戻る
 ふと足を向けた 見慣れた街
 思い掛けず微笑むあなた
 出逢いもこの季節 巡り返す季節

 明日の約束が口に出せない
 珈琲カップの陽炎が踊る
 ふっと溜め息だけ 乱れた胸
 思い返す 微笑むあなた
 出逢いもこの季節 巡り返す季節

 あなたの目には どう映ったろう
 視線を揺らす 言葉少ない僕
 何もかもが振りだしさ
 もう一度始まる 待ち続ける日々が

 どうすれば切り出せたのだろう
 忘れ切れないまま 繰り返す僕
 思い掛けず微笑むあなた
 僕の心に影を落とす
 何もかもが振りだしさ
 もう一度始まる 待ち続ける日々が

そう、あれはあまりにも突然の再会でした。
それから数日間。そちらに滞在しているうちに何かきっかけをつくって、もう一度、話をしたいと思っていたのですが‥‥
結局、妙案が浮かばず、そのまま、また次の旅へと出てしまったのです。

(C)hasmi toshihito 1987,1995


視聴会録
出席者:井上竜夫(I)、佐久間充(S)、蓮見季人(H)

(イントロを聴いて)これ大変だったでしょ。
 ここだけで5時間かかった。
 この曲は、非常に難産だった。というのも、まず元のアレンジがいま聴いてもあまりに斬新すぎて‥‥。新たなカタチで復活させるのが困難だったんだ。元バージョン、聴かなきゃ良かったと思った。
 前とはもう、ジャンルが違うね。
 メロディラインも若干変えちゃってるしね。
 ワルツになったから。
 このカタチが、一番この曲が望んでいるカタチだと思う。弦アレンジは、蓮見いずしては作れなかった。
 前のは、ニューミュージックっぽかったじゃない?
 ニューミュージックの皮を被ったヘビーメタルだろ、やっぱ。
 前からイントロは、バロックっぽくなかった?
 詞は変わってないよね。
 ちょっと変えた、後半部分。現在形だったのが過去形になってる。誰も気づかないだろうけど。


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