DTP架空座談会2
●蓮見季人
ada-kyさんの「続く‥‥」発言を実現させるべく(笑)、本日はみなさんに再度お集りいただき、ありがとうございます。(<みえみえのウソ)
今回は「PDF」を中心に、話をしてみたいと思います。
まず、そもそも「PDF」って何なんだ? ホントに普及しているのか?重いんじゃないのか? というところから‥‥。
●いとけん
PDF話を進めようと、まず「HTML≦PDF」の裏を取り始めたんですが、これってすでに世間じゃ通じないみたいですね。
「PDF=Adobe Acrobat file」という式が成立してしまっている。
本来PDF(portable document format)って読んで字の如し、環境に左右されずに閲覧可能なファイル形式を指す一般名詞だったはずなんですが。可搬文書形式とでも言うのかな、UNIX、DOS、Mac、専用機その他の間で交換・利用が可能なファイル形式。
●亀山 晃
そうなんですか、それで「Portable ‥‥」な訳ですね。
Internetの世界では、まだまだかもしれませんが、普及度は、
1)最近のアプリケーションのオンラインドキュメントが、PDFファイル。
2)CD-ROMで発売されている「デジタルコミック」が、PDFファイル。
重さは、
1)アプリケーションのメディアは軽い(CD-ROM 1枚分)。
2)起動後、ファイルを開くまでが重い。
3)ファイルが開いた後は、サクサク動きます。たとえ、2〜4MBのサイズであっても。
といったところです。
●いとけん
WebやFTPでの技術ドキュメントの配布手段としては実質標準といって言いと思います。こっち方面での普及度は、かなり高いんじゃないでしょうか。SGMLはどこへ行った、という気もしますが、やはり手軽なほうが強いですね。
こういう言葉を1企業の商標のように扱われると無性に悔しいのですが、 Acrobatがこれだけ普及したことについては、さすがアドビと素直に誉めておきます。
# でも、商標じゃないけどね:-p
●蓮見季人
ありがとうございます。では、実際にPDFを扱う上での問題点などに話を移してみたいと思います。
●亀山 晃
亀山は「コンピュータ・ソフトウェア・エンジニア」という肩書きなんですが、あるメーカさんのユーザサポートシステム データベースに、製品の取扱い説明書等を加えるんですよ。これが「PDFファイル」形式だったりします。
で、各版下を作成なさる業者さんから「紙製品」と「PDFファイル」を合わせて納品していただくようにお願いしている状況があります。
それなのですが、「PDFファイル」が作成できない業者さんは、各種DTPアプリのファイルでデータが提供されます。それをPDFファイル化する訳です。
一番大きな問題は、ずばり「フォント」です。そうです、「フォント置き換え」を行うのです。この時点で、デザイナーの思い入れが吹っ飛びます。
でも‥‥こういった仕事は正直言って疲れます。各所のオリジナリティなんて‥‥
そうそう、「何でもできる」というのはうちにも言えるかもしれない。なんたっていろんなものを「寄せ集めて」仕事しますから(笑)。
●ada-ky
うちでも「PDFでも納品してくれ」という要望は日増しに強くなるばかり。その時、亀山さんが書かれたような、フォントの問題が出てきます。 Acrobat3.0Jは現状では日本語フォントの埋め込みができません。
つまり相手の環境にないフォントは、ソフト側で勝手に「近い」フォントに置き換えられる訳です。
レイアウトが崩れにくい置き換えが最優先されますが、PSフォントが一般ユーザのトコロにそうそうある筈もなく、大抵は2、3種のトゥルータイプ・フォントになっちゃうのですね。フォントの選定に心血を注いでも、これでパーになる。
●きんさん
ホント最近PDF形式でマニュアル添付されてるもの多いですね。なんかあんまし見る気はしないのですが。
紙ではなく、あくまでコンピュータ上で閲覧するのなら、フォントの差で見栄えが狂うくらい、問題ないような気がするのですが、とんでもない考えなのでしょうか。
●亀山 晃
推測ですけど、印刷屋さんやデザイナーやさんは、自己表現の手段としてフォントをかなり重要視しているんじゃないでしょうか?
亀山みたいな「こんぴゅーたや」は「読めてなんぼ」やから、フォントとかは二の次となるんですが‥‥
●蓮見季人
「純粋な」デザイナーさんは怒るかもしれませんが、電子書類においては、僕もそう思います。ただ、レイアウトの制御はできてほしいですが。
デザイナーの思惑通りに行かない現状を考えるなら「PDFなんて所詮ついで」と割り切ってしまった方が、今のところ精神衛生上よさそうですね。
ところで、表示にかかる時間に関しては、いかがですか? 僕はPDFを使っているページに行くと、非常にむかつくんですけど。(^_^;
●亀山 晃
亀山は、自分ちのコンテンツをPDF化する為に「個人用のAcrobat」を購入したのですが、いざ、コンテンツをPDF化するとサイズがめちゃデカイ。これは、背景画像の為なのです。結局、現状の「HTMLファイル」のままとなっています。
やり方次第では上手くいくのかも‥‥?
●いとけん
Acrobatって荒っぽく言えばベクターデータはEPS、ビットマップデータはJPEG、ですよね。JPEGで圧縮効率の上がる絵柄はAcrobatにも向いてると言えます。‥‥釈迦に説法だったらごめんなさい。
ところで、WebコンテンツからAcrobatファイルを作成することのメリットはなんでしょうか? ちょっと思いつかないので良かったら教えてください。
●亀山 晃
いやぁ、自分とこの連載物をバックナンバーとして一まとめ(1個のファイル)にしたかったんです。それだけです‥‥
#実わ、良く分かっていないだけだったりして‥‥あわよくば、ばらまくと(笑)。
●蓮見季人
こうやって話をお聞いていると、ますます「PDFのウリ」が、よくわからなくなってきますねぇ。(^_^;
●きんさん
見栄えのことよりも、せっかっくコンピュータ上にあるのなら、文章の論理構成を中心に作り上げ、見る人の好みの見栄えにいくらでも組み上げられるとか、場合によっては、各章のタイトルだけ並べられるとか、そういう作りの方が嬉しいような気がします。(本来のhtmlはそういうもんでした)
●蓮見季人
要するに、適材適所の使い分けがまだできていないんですかね。
現時点では、結局「ワンソース・マルチユース」という言葉だけが、一人歩きしていて、「使い分け」まで頭が行っていない感じですね。
●ada-ky
Adobe Acrobatの次のバージョンでは日本語フォントの埋め込みに対応しますが、そうすると今度はPDF形式の特徴であるファイルサイズの小ささを放棄せざるを得なくなるかも知れません。
特にカタログやパンフ、時刻表など印刷物と同時進行でPDFをWeb公開したりする荒業も、CIDフォントや Acrobat次期バージョンの登場で増えそうですが、いざユーザーがダウンロードしようにも、時間が掛かりすぎて諦める‥‥そんな可能性もあるわけで。
なかなか、すべて解決ということには、なりませんね。
●まな坊
ところで、『CIDフォント』って、何ですぅ? いや、ポストスクリプトは知ってるんですが、「CID」というのは聞いたことありません。
●ada-ky
『CIDフォント』ちゅうのは、新しいポストスクリプトフォントの規格のことで、文字ひとつずつが独自の詰め組み情報を持っています。いままでのOSFタイプのPSフォントは詰め組み情報をもっていなかったので、オペレーターは(自動化するアドオンなんかもあるが)自分で文字詰めをやってた訳です。
このあたりが、「組み版文化の崩壊」に結びついているということ。
●まな坊
あと、「ATM」って、ポストスクリプトのデータを、画面とプリンタ両方に出力してやる! ようは、ポストスクリプトプリンタじゃないプリンタでも、ポストプクリプトのフォントが印刷できる!って考えていいのでしょうか?
●ada-ky
『ATM』は、まな坊の言うとおり!
Adobe Type Managerの略ですね。これのWin版が出て、PSフォントもぼちぼちとWin版が出て、WinDTPの目がようやく出てきたんですな。PSプリンターって高いんですよね、実際。
ま、データ入稿という言葉を「魔法」と勘違いしている人達には無縁の話題ですね。ちょっとコンピュータかじった位の人に多いようです(^^;。
「印刷業界困ったちゃんNo.1」(笑)
(「談話床」98.04.04〜98.05.26でのやりとりを元に編集)
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