拝啓、矢追純一様

 はじめまして。最初に、このような形でのお手紙、失礼いたします。
 康子さんを介し、私の意見が伝わった後、あなたのホームページも覗かせていただきました。
 また、「そのような人にこそ、セミナーを受けて欲しい」とのお誘い、ありがとうございます。
 ただし、残念ながら、十万円という金額をお支払いするだけの財力が、当方にはありません。そして、そこが問題なのです。
 これは、矢追さんへのお手紙であると同時に、本紙の記事でもあるので、この文章を書くに至った経緯をご説明いたします。

 確か5月のある日、私が書店で立ち読みをしていると、矢追さんの名前が目に止まりました。それは、矢追さんが主宰するセミナーの記事広告でした。「これを受講すれば、すべてがわかる」との旨のものです。未確認飛行物体をはじめ、さまざまな超常現象の謎を追っている矢追さんの調査対象が、すべて関連し合っており、そこに重大な秘密が隠されている。それは、不特定多数を相手にするマスメディアでは扱えない重大な問題であるため、ぜひ、このセミナーへ、という内容だったように記憶しています。しかも、「疑念を持っていては意味がない」。そして、これは初級コースで、まだ中級、上級コースがあると‥‥。私はこの広告を読んで、目の前が暗くなりました。矢追さんまでが、多くの先人の過ちをトレースするのかと。そして、後日、共通のガールフレンドである康子さんに連絡をとり、私の意見が、ご本人の耳に届くに至ったというわけです。

 私は、矢追ズ・チルドレンのひとりだと自覚しています。矢追さんの製作する番組がテレビから姿を消して、寂しく思っています。番組が姿を消した理由。それは紛れもなく、「オウム真理教」の一連の事件の余波でした。以前、本紙でも書いたとおり、矢追ズ・チルドレンのすべてが、犯罪に走るなどというわけがなく、この矢追パージが、いかに馬鹿げたことであるか、余程のバカでない限り、分かるはずです。あのときは、事勿れ主義のテレビ局がいっせいに超常現象モノを自粛しましたが、すでにそれも過去となりました。しかし、矢追さんだけは、復帰できない。「社長が交代するまでは、日テレでは作らせてもらえない」ということも聞きました。まったく馬鹿げたことです。しかし、それなら、過去のしがらみなど振り切って、他局と組んだらいかがなのでしょう。「X-ファイル」などの大ブームを上げるまでもなく、矢追純一が作る「エンターテインメント」番組を見たがっているファンは、確実にいるのです。

 そもそも、今回のセミナーに至ったのは、失礼ながら経済的側面が大きいと理解しています。昨年は無収入だったとも聞いております。もちろん、「真実を伝える」というご使命もあるのでしょう。しかし、このセミナーの形式が、とても危険なもののように思われてなりません。かのシルバー・バーチが、彼を食い物にしようとする取り巻きの声を跳ね除けたこと、それがいかに賢明だったかを思い出してください。たとえ始まりは善意であったとしても、「真実」に「金」がからむと、ロクなことになりません。このような形式の「商売」(あえて、こう表現させていただきます)がいかに愚かな結果を産むかの例は、古今東西、枚挙にいとまがないはずです。十万円という少なからぬ金額を払った受講者の中に、「詐欺だ」と騒ぎだす人間がいないと、言い切れるでしょうか? 幸か不幸か、受講生はなかなか集まらないようですね。それは、そうでしょう。多くの矢追ズ・チルドレンは、過去の幾多の過ちの事例も知っているのです。

 矢追ズ・チルドレンのひとりとして、私が望むこと。それは、再びエンターテインメントとしての「矢追ズ・ワールド」を日テレ以外のチャンネルで楽しませてくださること。そして、経営を立て直し、「真実」を語るのは、商売抜きにしていただくことです。若造が、勝手なことを言って申し訳ありません。しかし、矢追さんには「自滅」して欲しくないのです。ご賢明なご判断を祈ります。

敬具 蓮見季人


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