Apple 復活!!

それは、嵐の前の静けさだったのか?
去る2月18日から21日に幕張メッセで開催された「MACWORLD Expo/Tokyo 1998」は、贔屓目に見ても盛大とは言えないものだった。
しかし、それから1ヶ月。AppleならびにMacihtoshを取り巻く状況は、急変している。もちろん、思いも寄らぬ程、歓迎できる方向にだ。
創始者スティーブ・ジョブズの復帰から1年あまり。Appleはいま、復活の時を迎えた。


Appleの株価が急騰
 「MACWORLD Expo/Tokyo 1998」を見にいった感想を包み隠さずいえば、「寂しい」ものだった。会場面積は半減し、それに合わせて各企業ブースとも縮小、参加しない有力ベンダーすらある。クラリス社の分割、名称変更は、その声明がいくら前向きなものであろうと、ユーザーの不安を完全に払拭できるものではない。この展示会の主催団体IDGもマック専門誌の老舗『MACWORLD』誌を事実上の廃刊。何より、本家アップルのブースの寂しさときたら‥‥。
 G3マシンの予想を遥かに上回る売れ行きや、5年ぶりの黒字転換、規模縮小に関わらず昨年なみの入場者数を記録するというマックユーザーの志気の保持など、明るい話題に気持ちを向けつつも、不安を消し去ることはできなかった。
 ところが、それから一ヶ月。思いも寄らぬ朗報が舞い込んできた。「Appleの株価が急騰」。その数週間で2倍。昨年末からみると3倍にも達しようかという勢いのようだ。それに合わせてアメリカのメディアも、手のひらを返すようにAppleを持ち上げ始めたらしい。マスメディアでの不当な報道に翻弄されてきたAppleだけに、この状況の好転は、大いなる追い風になるはずだ。
 そもそも持っているユーザーインタフェースの優秀さに加えて、PowerPC G3によって実現したプロセッサでの優位性、そして製造コストの低下による廉価マシンの現実性。これらの情報が正当な報道をもって発信されるなら、Macintoshユーザーが強いられてきた不当な心労から解放される日も遠くないだろう。

ジョブズに着いて行く
 ところで、何が投資家たちの心変わりを起こさせたのか? これといった大きな要因は見当たらないようなのだが、噂は諸説あるようだ。しかし、活字化することでいらぬ誤解を増長させるのもつまらないので有力な説だけ挙げてみよう。
 なんといっても、ジョブズである。暫定CEOである彼の大胆な決定は、ユーザーをして「?」と思わせるものが多かったが、黒字転換という実績を伴っている。
 宿敵とされていたマイクロソフトとの提携。マイクロソフトによる買収というとんでもない誤解を招いたこの提携劇だが、フタをあけてみたら、マイクロソフト製品のMac化だった(マイクロソフトの製品開発者たちがAppleのOBなのだから、考えてみたら不思議はない)。これは、マイクロソフトが業界基準を覆そうとして難航しているJava仮想マシンの開発でも同様のことになりそうだ。
 今回の株価急騰の最大の要因は、このJava仮想マシンにおけるマイクロソフトとの提携だともいわれている。つまり、業界を混乱させるキカン坊、ゲイツ君を彼のアイドル、ジョブズがなだめてくれることへの期待‥‥といったら言い過ぎだろうか?(< 言い過ぎだよ)
 その他、大顰蹙を買った互換機ベンダー切りも私自身、職場でアキアの放出品を使用したことで納得がいった。要するに純正品の持つデリカシーがないのだ。多くの互換機待望論者の要求していたMac OS搭載マシンの低価格化がG3によって実現できる今、不要と判断するのも頷ける。Newtonの開発中止とそれに代わるモバイル用Mac OS互換システムの開発も大歓迎だ。
 何を考えているかさっぱり分からない変人も、解答が正しければ、誰もが天才と認めることができる。そして、投資家たちは、その天才を信じて、着いて行くことに決めたのだ。われわれユーザーも、着いて行くことにしようではないか(ちょっとの警戒心は持ちつつ)。

(蓮見季人)


目次に戻る