とりあえず
魅力の片鱗を


『一風堂/土屋昌巳ベスト 
 すみれSeptember Love』

(EPIC SONY)

 SUGIZOさまさま、SAZNAさまさま、ということで、突如、発売されましたっ!『一風堂/土屋昌巳ベスト』。
 79年8月21日発売の一風堂デビューシングル「もっとリアルに」から89年8月21日発売の現時点での土屋昌巳のラストシングル「レディ・ロキシー」まで、きっかり10年分(!)。14枚の全シングルを中心に18曲を収めた「正統派のベストアルバム」仕様となっています。収録順もリリース順通りだし‥‥。
 CDとしての一風堂時代の音源は「すみれSeptember Love」ヒット当時のベスト盤『LUNATIC MENU』しかなかったわけで、これは貴重な一歩です(ちなみに、この2枚でのダブりは、18曲中4曲)。

 リリース順の収録と言うのは、こういった長期に渡る、そして変動の激しかったミュージシャンの物としては、意義深いですね。いやぁ、最初の2曲の浮いてること浮いてること(笑)。ファンでもちょっと恥ずかしかったりします(ファーストアルバムでも、『LUNATIC MENU』や未CD化のベスト『SOME-TIMES』に収録されている他の曲は恥ずかしくないんだけどなぁ‥‥)。
 また、通り一辺倒の詰め込み型ベストということで「作品」という意味での満足感を求めるのは、贅沢ってものでしょうね。
 何はともあれ、これまで一風堂ならびに土屋昌巳の音楽に触れることが困難だった若い方たちに、その魅力の片鱗を伝えられることができるということで、由としましょう。ただし、このベストで触れられるのは、「片鱗」だけですからね‥‥(それにしても、‥‥どうにかならなかったのか、このジャケットデザイン)。

 願わくば、ここから過去作品が見直され、かの幻の名盤『NIGHT MIRAGE』と伝説のスーパーセッションによるライブ盤『live and zen』がCD化されること‥‥。この2枚が再発されないと言うのは、社会的損失ですよ。ほんとに。

 それから、一風堂といえば、映像。日本で最初にプロモビデオを制作して、海外で高い評価を受けた、とか、もっと知られてもいいと思うのだけど‥‥。
 あと、「アフリカン・ナイツ」のころのTV出演映像とかも、世に出れば、再評価の気運はぐっと高まると思いますよね。遅れてきたファンである僕が、数年前、第二次一風堂熱に罹ったのも、当時のビデオを見せてもらったからで、そのカッコよさと言ったらもう、アナタ‥‥(言葉にならない)。
 ところで、フルアルバムは?

(蓮見季人)


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