珈琲にこだわれ

〜豆の種類:モカ〜

 コーヒーといえばモカ、モカといえばコーヒーを誰でもまっ先に連想すると思います。そういう意味では、モカはコーヒーの王様と言えるでしょう。
 ところで、この「モカ」という名前、どういう意味があると思いますか? 実はこれ、港の名前なんです。ふつうコーヒーは、産地の名前で呼ばれることが多いのですが、この「モカ」は、数少ない例外のひとつでしょう。

 もともとコーヒーは、エチオピアで発見されたと伝えられています。このエチオピアの、紅海を挟んだちょうど向かい側にイエメンという国がありますが、こちらはかつてアラビアという名前でした。
 もちろんこちらでもコーヒーの栽培がされていたわけですが、この国に「モカ」という名前の港がありまして、かつてコーヒーは、みんなここから出荷されていたのです。それで、ここから出荷されるコーヒーは、全て「モカ」という名前が付けられることになったのです。今では、このモカ港は使われなくなっているのですが、相変わらずこの地方のコーヒーは「モカ」という名称で親しまれているというわけです。
 現在でも、エチオピアとイエメンの両方で作られているコーヒーには「モカ」という名前がついています。もっと細かくいうと「モカ・ハラー」と呼ばれたりするのはエチオピア、「モカ・マタリ」と呼ばれるのはイエメンのものです。単に「モカ」とだけ呼ばれているものは、イエメン産のものです。

 モカ(ここでは両方を含む)は酸味が特徴で、少し深めに焙煎したものはコクが出て、酸味がかえってすっきりした後口になります。「苦みのある珈琲の方が好きなんだよなー」とかいいながら「やっぱり珈琲はモカ!」とかいう人には「わかってないねぇ」と、したリ顔で蘊蓄をたれてやりましょうね。

(アラビカ・ヒコ:1996.09)



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