ライダーズらしぃさは
どこにぃあぁるぅだろう

シングル「恋人が眠ったあとに唄う歌」
アルバム『月面賛歌』&ライヴ
ムーンライダーズ(キューン・レコード)

年期は伊達じゃないです
 ムーンライダーズの18枚目のアルバム『月面賛歌』が、8社目のレコード会社キューン移籍第一弾として発表された。移籍発表記者会見を兼ねた4月のライヴからの彼らの動きを振り返ってみよう。
 4月3、4日。新宿の日清パワーステーションで行なわれたライヴは、アコースティックセットによるものだった。実は私は、ロックバンドのアコースティックライヴというものにあまり期待をしない。「お手軽」な感じのするものが多いからだ。その上、この両日は、レコーディングの合間を縫ってのもの。練習時間がそれ程とれるわけもないわけで、それでなくともツアー初日のライダーズのライヴときたら‥‥。ところが、びっくり! 「いつからそんなに演奏うまくなったんだぁぁぁ!!」というファンとは思えぬ暴言が思わず口をつく完成度。アコースティックセットのもうひとつの懸念、「アレンジの幅が狭くなる」というのも、ありあまるほどの音楽的抽出をバランスよく駆使してくるので、まったく飽きさせない。まさに大人の余裕をまざまざと見せつけられる結果となった。

これでヒット狙い?
 5月30日、先行シングル「恋人が眠ったあとに唄う歌」発売。演奏が上手くなった「はちみつぱい」か?と思わせる一発録り風ロック。鈴木慶一の曲もサニーデイ・サービスの曽我部恵一の詩もなかなか好いが、シングル向きのアレンジとは思えない。C/Wの「酔いどれダンスミュージック」は、はちみつぱい時代からのクラシックスだが、時代が一巡したかのように「はっぴいえんど」を彷佛とさせるブリブリの重いロックとなっている。

バラけて思う「クジラさんのバンドだ!」
 6月8日、渋谷クラブ・クワトロにて「鈴木博文 with 武川雅寛」ライヴ。ライダーズが置き去りにしてきた名曲の数々がたくさん聴けて、ファンは満足。バックのメンバーも青山陽一を除くグランドファザーズってことで、良くないわけがない!
 で、私の感想は、「ムーンライダーズは、クジラ(武川)さんのバンドである」というもの。鈴木博文は、ライダーズ以外でたとえライダーズの曲を演奏しても、紛れもない鈴木博文のソロになるというのは、知る人の誰もが認めることだろう。メインボーカルの鈴木慶一でさえも、同様である。しかし、武川雅寛がライダーズの曲に関わると、他の5人のメンバーが揃っていなくてもその曲はライダーズの曲となるのだ。‥‥と言い切るのは怖いが、そう感じてしまったのだから仕方がない。

誰がやってもライダーズ
 そして、7月18日、『月面賛歌』発売。自らのアイデンティティを壊しながら突き進んできたプロデューサー集団ライダーズは、ついにプロデュースを放棄する。しかも、一曲ごとに別々のミュージシャンに託すという徹底振りで。
 今作の製作工程は、まず、ライダーズ自身による「生演奏仕様」のベーシックトラックを録音。そのマスター音源を彼らの「二世代下」のプロデューサーに「好きにやって」と渡す。それ以外の打ち合わせはいっさいなし。ちなみに主なプロデューサーは、coba、ゴウ・ホトダ、高野寛、テイ・トウワ、桜井秀俊、斉藤和義など。
 果たして上がってきた作品は、ライダーズ自身の演奏トラックがまったくなくなってしまったものをはじめ、てんでバラバラ‥‥のはずなのだが、徹して聴いてみると、しっかり「ライダーズサウンド」になっている。共通点として、どの曲も鈴木慶一のヴォーカルが前面にでているということもあるのだが、なによりも四半世紀にかけてあらゆるジャンルの音楽を喰い散らかしてきたライダーズにとって、もはや逸脱などないというコトなのだろう。

ヒットするって どんな唄だろう
 もちろん、今回の方法ならではの特色もある。一言でいえば、「聴きやすい」ということだ。今作の最重要課題、ライダーズが唯一やり残してきたこと「ヒット曲をだす」という方向性には、合っている。しかし、シングル「恋人が眠ったあとに唄う歌」にアルバムに収められた斉藤和義バージョンを使わないところに、勘違いがあるとも思うのだが‥‥。ヒットを「目指した」という点からか、13枚目のアルバム『A・O・R』に全体の感触が似ているが、同様にそれがファンにとっては喰いたりなさに感じるのも否定できない。

 とまぁ、いろいろ書いてはみたけれど、「幸せの場所」の一節「男らしさは どこにあるだろう/強くなるって どんな人だろう」(詩:原田知世)のところの慶一さんの切なさ爆発の歌声に免じて、すべて涙に流す! 私の声も収録されてるし(聴き取れるわけないけど)。

(樋淑瑞葉)


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