秋葉原と書いて
アキバ




 秋葉原といえば、世界的に有名な電気街である。しかしそこは、あなたの目があなたの身体を離れるアンバランスゾーンでもあるのだ。コンピュータ、家電は平常を装っているが、部品屋はそのベールを剥いで、私たち一般人に襲いかからんとしているのだ。
 そこに生息する人々は、この街を「アキバ」と呼び、客、店員のバランスが崩された、閉ざされた王国をつくりだしている。初心者などがこのアキバに足を踏み入れようものなら、精神的にずたずたにされるか、洗脳(マインドコントロール)されてしまうかのどちらかであろう。
 僕は仕事柄、週に一度は立ち寄るので、ここで得られた貴重な情報から、訪れる主な人物を分類してみた。
電気マニアの小僧
小学生くらいのくせして、いきなり店のおやじに「TPAS202の600のやつください」などと言う。
設計製造会社の人
作業服姿でメモを店のおやじに渡して「毎度、ホニャララ(株)ですけれど、30分後にまた来ます」と言って、次の店に行く。
大学の研究室の人
メモ用紙を見せながら「***を1つと×××を2つと‥‥」などと言い、最後に大学名で領収書をもらう。
外国人観光客
何も買わないが、一応いじくり回していく。
店のおやじは「さわっちゃだめだ」と日本語で言う。
初めての人
おどおどしながら「こういう部品ありますか?」と聞く。
答えはたいてい「うちにはおいてないよ」となる。
 新参者には厳しいのである。慣れない人は、平日は避けて、土日に出かけることをお勧めする。初心者を嫌がる店は、土日休みが多いからだ。店によっては親切丁寧な対応をしてくれることもあるが、それが余計にうさん臭くて、怪しく思えてしまう僕は、完全にアキバに洗脳されてしまったのだろうか。
 今度は、店員も分類をしてみたいが、スペースの都合により、またにしたいと思う。

(たかのさとし)


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