今こそ真正なる悪意を
『電子音楽・イン・ジャパン 1955~1981』
田中雄二(アスペクト)



 日本初の電子音楽作品制作からYMO散開直前に至るまでを丹念に取材・再構成した700ページの力作。読みどころはいろいろあるのだが、いわゆるテクノ/ニューウェーヴに触れた部分ついて私見を記そう。
 YMOにしろ御三家(P−モデル、ヒカシュー、プラスチックス)にしろ、皆レコード・デビュー直前までテクノとはまったく異なる音楽をやっていたし、2年もたたないうちにテクノに対する嫌悪感を露にして転身してしまった。
「テクノロジーの進化でミュージシャンのアイデンティティが崩れていくことを楽しんでいた」(高橋幸宏)、

「悪意をもってカリカチュアしてやること」(井上誠)
との証言が、当時もてはやされた人々の屈折した想いを示している。
 テクノ/ニューウェーヴの革新性とは、現行の音楽に対する嫌悪感に基づく「音楽による音楽批判」だったのであって、それは音楽に耽溺しきった態度からは決して生まれなかったものなのだ。

(宮野 義昭)


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