老成を拒否する
建築家の軌跡

『篠原一男』
TOTO出版

 モダニズムから出発しながら、後追いではなく自力でポスト・モダニズムを切り開いた希有な建築家が篠原一男(1925−)である。
 伝統的民家の形態特性を抽象化した第1期、白い立方体にストイックな余白の美を演出した第2期、構成原理を異にする空間を強引に接合した第3期、マシーンとノイズの建築たらんとした第4期。その長いキャリアの中で示した大胆な作風の変貌から判るが、この建築家、歳とればとるほど作風がより斬新かつ過激になっていくのであった。
 形態の過激さを追求するあまり構造力学の限界を超えてしまったこの老建築家、このまま実現不可能なプロジェクト作りに邁進するのか、それとも時折見せる民家への回帰をとてつもなく意外な形で果たすのか。
 老いた己に鞭打つかの如き軌跡を示すこの作品集を見ながら、30(20?)に満たぬのに妙に懐古趣味的な若年寄の多い音楽の将来を危惧し、かつ表現者としての自己の内なる収束性を猛省する次第。

(R/W)


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