フェイ・ウォン特集

■最近買った音盤

●『十万回のなぜ』      フェイ・ウォン
●『あなたのそばにいつも』 プリシラ・チャン
●『美少女宣言』   ヴィヴィアン・チョウ他
●『わたしの1997』      アイ・ジン
 昨冬、大陸視察の記念にコンピレーションもののカセットを買ってきた時には、正直言ってイロモノ的に面白がっていたのだけれど‥‥『十万回のなぜ』のあまりの良さに次々買い込み、今では心底ハマッてしまっている。
 中国語の歌声って(まだ北京語と広東語の識別できません)、日本語ほど引っ掛からず、英語ほど流れ過ぎず、柔らかくてホントに心地好い(会話はあんなに騒々しいのに)。オリジナルではとても聴く気にならない中島美雪や竹内瑪莉亞も、すごくいい曲に思えてくるほど。

(蓮見 季人:94.05『ばるんが通信』創刊準備号より)



■ピーター・レンのみーはーくらぶR

 なんたってフェイですよ、フェイ!王菲!フェイ・ウォン!シャーリー・ウォン。
 日本盤『十万回のなぜ』が良い!ということは前号でも書いたが(祝5000枚突破)、声と作品は気に入ったものの、正直言って顔は‥‥と思っていたのです。駄菓子菓子!HMV銀座店のホングコング・コーナーで出会った、他の作品のジャケ写ときたら!か、可愛いじゃないか。‥‥まぁ、所詮こんなもんだよ。「ハスミも唯のオトコだったのね」。
 1st、2ndを先に買ってありながら、外箱欲しさに初期作品3枚ボックス(むろん中身はまったく同じ)を買ってしまうほどで、その他、企画モノの巾着つきミニアルバム(このジャケ写に負けたのね)やら何やら、もうフェイに関するものなら、なんだって欲しい!の状態です。
 ちなみに作品的には『十万回のなぜ』がやっぱり一番。この春発売されたばかりの台湾版『'迷』は、普通話(中国の標準語)で歌われているし選曲も良いので、中国語を勉強している人には大推薦。ベスト盤『最菲』は、アートワークがなかなか凝っていて、これも良い。デザイン面でいえば、ウイニー・ロウの『改改』など、最近の香港POPは結構良くできているものも多い。
 などと書いているうちに紙面が尽きた。尽きせぬ思いは次号へ! それでは再見!

(蓮季:94.06『ばるんが通信』より)



■今月のフェイフェイ

 前号で紹介した、台湾版の『'迷』日本版(邦題『恋のパズル』ボーナストラック付き)が発売。フェイの「うた」の魅力が存分に活かされたバラードが美しい。旧譜2作も同時発売。さらに、香港版新作『胡思乱想』が早くも登場。漢字を解体したタイポグラフィと白地に乳白色印刷というデザインがカゲキ。

(蓮季:94.07『ばるんが通信』より)



■フェイフェイに片想い

 現在日本で入手できるフェイフェイ(王菲)のCD12作品をすべて買い尽くしてしまい(内3作は2枚づつ所有)、行き場を失ってしまった私のミーハー心。なんとか心の隙間を埋めるべく、渋谷のHMVへ行ったのだが‥‥。
(中略)
 しかし‥‥やっぱり満たされない。いや、かえって心の片隅にくすぶっていた何かに油を注いでしまったようだ。‥‥動いているフェイフェイが見たい!
 ポリドールさん。三枚同時発売の次はどうか、ビデオクリップ集をお願いします!

(蓮季:94.08『ばるんが通信』より)



■さよなら歌謡曲
『胡思亂想』(王菲:フェイ・ウォン/新藝寶 CP50137)

 そもそも香港POPSに興味を持ったのは、しばらく忘れていたアイドル歌謡の魅力を思い出させてくれたからだった。もちろん広東語ならではの聴触感(ききごこち)の好さも大きな要因だったが‥‥。それぞれ魅力的なアイドルたちの中で、一番のお気に入りとなったのは王菲だった。しかし、まさかこんな事態になるとは‥‥。
 『胡思亂想』のヨーロピアン・アプローチには、すでにアイドルの面影はない。カヴァー曲にコクトー・ツインズをもってきて、しかもそれに違和感を感じさせないアルバムとしてのトータリティ。シングルカットされた「夢遊」はFM局のローテーションにも入り何度もオンエアされたが、多くの人はこれを香港モノとは意識しなかったのではないだろうか。それほどパブリックイメージとしての「香港ポップ」から逸脱してしまった。
 しかし、果たしてその完成度はムチャクチャ高い。とくにサラ・マクラクランを彷彿とさせる深遠なコーラスワークは絶品だ。『十萬個為什麼?』で香港歌謡を極め、『'迷』から始まったフェイ・ワールドの模索は、たった半年でここまできてしまった。さらにこの延長線上につくられた台湾版の新作『天空』では、よりアコースティックなアプローチを見せている。これは僕の求めていた音の一つの完成形じゃないか。
 こうなると困った。もう他の香港歌謡では満足できなくなってしまった。歌謡曲を一段下に見るというヒエラルキーを頭では否定しつつ、こう歴然とした差を見せつけられると、降参するほかない。フェイの歌声に誘われて、モノ珍しさと懐かしさで迷い込んだ香港POPSワールド。そこから、同じくフェイの歌声によって離れていくことになろうとは‥‥。           

(蓮見 季人:94.12/投稿した雑誌の頓挫による未発表稿)



■桃源郷の唄姫の生の息づかいに憂き世を忘れる
『Faye wong live in concert−王菲最精彩的演唱會』(フェイ・ウォン/CINEPOLY)

 しばらく自粛してたけど、冷めたわけじゃないぜ。新譜は、ずっと買い続けてるし、アジアンビートの王菲特集も。ちゃんとエアチェックしたもんね。
 しかし、このリリースサイクルは壮絶だ。初の日本盤『十万回のなぜ』が発売されてから、約1年。その間なんと6枚のオリジナルアルバムが日本発売。さらに、日本未発売盤が3枚もある。
 しかし、驚くべきはリリース数ではない。その質の向上だ。コクトーツインズなどのカバーに象徴されるアイリッシュなアプローチでも、広東語のニュアンスとあいまってオリジナリティを確立。本物だぁね。
 2枚組のこのライブ盤は、その総括版。スタジオ盤に比べると、ちょっと粗いのは仕方ない。MCで聞ける息づかいで許す!

(ピーター蓮:95.04『ばるんが通信』より)



■香港行きたい! フェイフェイに会いたい!
『恋する惑星(重慶森林)』王家衛監督作品

 フェイフェイ主演の映画が来る、と知ったのはいつだったか。日々の忙しさにチェックを怠って数カ月。久しぶりに『ぴあ』を見たら、もう5週目。上映館は、勤務先の直ぐ近く。それならいつでも行けたのに。早速出掛けると、満員立ち見。八月中は上映するというので、日を改めて再度出掛ける。
 実はあまり期待していなかったのだが、いきなり驚いた。これは素晴らしい映画だ。ゴダールを想わせる質感。「すれ違う街」香港を舞台に、二編のドラマがクロスフェードし、つながっていく(この構造を知らなかった僕は、ちょっと悩んだ)。香港アカデミー各賞総嘗めはおろか、世界各国でヒット。そうだろそうだろ、なんたって‥‥。
 フェイの写真集も買ってきちゃった(はあと)。

(蓮季:95.08『ばるんが通信』より)



■帰ってきた亜州の歌姫フェイフェイ

『王菲』(フェイ・ウォン/EMI 7243 8 2144625)

 香港の本土返還の騒ぎの中、まったくその動向が分からなくなっていた(といっても、私が注意していなかっただけかも知れないが)我らがフェイフェイの新譜が発売された。その名も『王菲』。デビューアルバムの様な直球ど真ん中、名前そのままのタイトルだ。それもそのはず、なんと、ポリドール系列のCINEPOLYから、EMIへの移籍第一弾である。
 北京語版である前作『浮躁』から1年半、広東語版としては、その前作『Di-Dar』から2年振り(注:この誤りは「フェイ・ウォンと高橋幸宏」で訂正)ということで、回転のめまぐるしい香港POPS界にあっては、本当に長い沈黙だったのだが、その間にレコード会社も移籍していたとは。これもやはり、本土返還と何か関係があるのだろうか? 主要スタッフもそのまま一緒だが‥‥。
 内容は、移籍第一弾と言うこともあってか、オーソドックスなつくり。コクトーツインズによる書き下ろし2曲を除く全曲の作詞作曲を自ら手がけた『浮躁』と比べると若干歌謡曲寄りになっているが(なかで最も歌謡曲っぽいのが、中島美雪の作品)、そこは、ビョークとも比されるフェイフェイ、単なる歌謡曲には収まっていない。相変わらずの浮遊感は、絶品だ。また、今作でもコクトーツインズの手による作品が2曲収録されている。
 なお、入門編として北京語版ベスト『菲賣品』(浮遊感満点の「天空」収録)と広東語版ベスト『王菲楽楽精選』(超ポップな「恋する惑星」主題歌「夢中人」収録)もお薦めだ。

(ピーター・リェン:97.10『ばるんが通信』より)


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