BORN AGAIN BEHIND
THE WALL OF SLEEP

〜オリジナルBLACK SABBATHの威容〜
Vol.4



 「オレ達のサウンドはオレ達と同じように、人生の暗部に触れてもそれを直視し、唾を吐きかけられるような、そんなヤツらのためにあるんだ。」‥‥スラッシュ・メタルの元祖・VENOMの名言である。
 そう、人間は(逆説的に言うと)心の底に破滅に対する憧憬を誰もが持っている。それはあらゆるものへの欲望、もしくは煩悩が生み出すものであろう。ロックン・ロールそのものがそういったものなのであるが、果たしてそれは単なる自虐心なのだろうか? 否、欲望によって汚れた生物であるから故にヘヴィ・メタルのような暗黒文化サウンドをBLACK SABBATHは生み出したし、そしてそれをファンは愛してしまうのであり、これほど「正直」なカタルシス、もしくはサイクルはないであろう。それ故に、この『REUNION』は非常にヒューマニックな暖かみを感じるのである。

 前回、日本の社会問題についての関連性についても触れたが、インターネットなどのテクノロジーが異常なほど発達し、非常に便利で美しい都市の街並みが見られるようになった一方で、深刻な経済破綻や、小学校に見られる学級(学校そのものとさえいわれている)崩壊などの将来的な人間のメンタルな部分の危機が見られるというのは、大げさに言えば、このBLACK SABBATHがみせる「正直さ」が機能していないことの証明である。ナイフ事件に見られるように、「死ぬ」「殺す」ということへの認識さえまともに持てなくなった兇気は、「ケンカをしても絶対に殺すことはしなかった」我々の代の不良魂にあった誠実さとは全く別のものである。
 話があまりにとんでしまったが、ともかくも『REUNION』に見られるそのヘヴィ・メタル暗黒文化の正直さ、誠実さ、ヒューマニックな暖かみは、そういったデジタル文化世代の渇いた感性に強烈なインパクトを与えるに充分なほどの力を持っていると私は思っている。

 さて、ここからはオタク話だが、この再結成への経緯というものはビジネス上のしがらみ、再び起こったメンバー間の確執‥‥と非常に揺れ動いた。

 オジー・オズボーンは、92年に引退しているはずなのだが、今も現役である。この矛盾は、つまり「それまでのような巨大なツアーは出来ない。」という宣言と解釈するべきだろう。
 実際、引退ツアーのスタートであった91年のジャパン・ツアーの「もうこれで見れないのか!!」という客側の意識は、武道館をこれまでにない異常なムードにしていたし、BLACK SABBATHのナンバーで、当時は「ライブで演るなんて、信じられない!」と思った「Snowblind」「Fairies Wear Boots」、また名バラードでありながら、ライブではそれまでやらなかった「Goodbye To Romance」 (ELTの「All Along」じゃないぜ。おっとヤバイ)という異例の選曲で、いやがおうにも終焉を感じさせたのだから。
 あの時は本気だったのだが、そのファイナル・ショウ、92年11月15日に「全員」が(「LIVE AID」でのオズボーン、アイオミ間の険悪さの残るオリジナル・ライン・ナップのライブ以来)7年ぶりに集まってしまったことは結局、逆説的にオズボーンをシーンに引き戻す結果となった。折りしも、前回述べたようにSABBATH支持者が堰を切ってシーンに溢れそうになっていた時期である。「再結成は必至」とのムードはメンバー間のわだかまりさえも無くしたかに見えた‥‥。

 しかし、ここからのメンバーのプライドやエゴのぶつけ合いは長かった。結局、その時点ではビジネス上の契約によって上手くいかず、オズボーンはアルバム制作、アイオミ、バトラーのBLACK SABBATHはマーティンを復帰させ活動を再開。しかし、ここでまたバトラーのマーティンへの不満が爆発し、アイオミとの確執さえ生んで自ら g/z//rというソロ・バンドを組むことになり、また、動き出したオズボーンのバンドにも加入、そして脱退。アイオミはマイ・ペースでアルバムを出しつつも、元JUDAS PRIESTのロブ・ハルフォードと接触したり、もう本家は別の世界へと行ってしまったかに思えた。
 しかし、いきなりこの『REUNION』の音源となったオリジナル完全復活ライブを97年末におこなったのだ。それ以来、オズ・フェスト'98でヴィニー・アピスを擁したライン・ナップより初代ワードが心臓の病を克服して(今も本当は闘病中)復活。98年12月31日からツアーを開始した。

 ‥‥筆者は、遂にオリジナルのBLACK SABBATHを目に出来るとはしゃいでいたのだが、前々回の冒頭の情報より解散の予定が12月までディレイしたけれど、やはり来なかった‥‥ということで、お前らなあ、こちとら12年も聴いてるんだゾ! 気まぐれでいいから来てくれよ、頼むよ。94年のアイオミ、バトラー、マーティンのBLACK SABBATHを横浜ランドマーク・ホール(タワーの中にある)でオール・スタンディングで見た衝撃を忘れずに2000年を迎えます。トホホ。
 だが、BLACK SABBATHが私に10代後半から20代の終わりまでに与えてくれたロックン・ロールの何たるかは、今後の音楽生活にとって多大な意味を持つだろう。
  I Love You All, BLACK SABBATH!!

(おわり:藤井 宏治)


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