『恐怖劇場アンバランス』の世界
(第2回)
「木乃伊(みいら)の恋」
性と死の執着
(前半)



 第1話である「木乃伊の恋」は、監督が何と鈴木清順という強烈な回であり、その内容も「アンバランス」のテーマを最も端的に表現していた。

 前半は、上田秋成の浮世草子「春雨物語」が語られる。
 ある村の古曾部家の床下から鈴の音が聞こえるようになり、出土してみると数百年前に入定した僧のミイラが発見された。
 このミイラはしかし、その後生き返り、何と女と見れば老婆にさえちょっかいを出そうとするようになり、遂には白痴の未亡人の女と交わりつづけ、金色の小人の「お仏様」を産み落とした。
 しかし、これを恐れた古曾部家の正次は、村人と共にミイラ――入定の定助を追い詰めた挙句、谷底へ突き落としてしまう(というような画面にはなっていないが)。そして、正次の結婚初夜、再びあの鈴が‥‥。
 彼が女と肌を交わそうとする夜には必ずその幻影が襲うようになり、遂に正次は一生女性とつながる事はなく果てたという‥‥。

 ‥‥そして舞台は現代へ。
 この奇妙な物語の口語訳の仕事を行なっていた則武笙子は、師である布川に「定助は、この世にも存在する」と、亡くなった夫の話を持ち出され、迫られる。
 拒絶する笙子だが、自らの身体の火照りを認めつつ、夫が亡くなった軍需工場跡へ赴く。しかし、そこで彼女が出会ったサングラスの夫は、まぎれもない夫だったのだ。
 雨の降りつける中で愛し合う二人‥‥しかし、よく見ればその顔は布川ではないか!!
 混乱しながら帰途を歩む笙子の前に、あわてて走って来る布川宅の女中、みね子の姿が。たった今、布川が亡くなったと告げられた笙子は叫ぶ。
 「それじゃ誰だったのよ‥‥! 私を抱いた、あの男は‥‥。」

「後半」へつづく:藤井 宏治)


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