児童向け連載小説が
熱かったころ

(最終回)
児童文化の陰の担い手?


 以上いくつか、忘れ去られた物語について語らせていただいた。この手の講読者が限られる雑誌に連載されていた物語には、実のところ傑作が多い。記憶が曖昧なのではっきりとは触れないが、他にもこの種の物語は数多く存在する。
 例えば‥‥

 時代はだいぶ下って80年代半ば。確か歯科医の機関誌に連載されていたと思うのだが、動物に関する嘘八百を大真面目に並べた爆笑ものの博物誌。
 ‥‥仲のいい二匹の像は、互いの耳に鼻を差し込んで内緒話をするだの、亀は急ぎの用事の際、手足頭を引っ込めて甲羅で転がって歩く(ガメラ?)だの‥‥

 高2だか高3コースに20年ほど前、連載されていたイズミヤ・シゲル(表記のまま)作の無茶苦茶なパンク小説。‥‥「卵割れん体にしたろうかい!」とか、とんでもない会話が飛び交っていた。いま思えば、当時の「爆裂都市」あたりと関係があったのだろうか。

 学研『学習』の夏と冬の特別号には、どういうわけか毎年えらく後味の悪い読み物ばかり載っていた。とくにSF小説。光瀬龍氏と豊田有恒氏の名前はよく目にしたように思う。ドクダミ茶でも飲むつもりで読んでいた。

 最後に、これは余談だが『受験の国語』。昔あれに連載されていたブックレヴューは強烈だった。国語の大学受験対策誌で、『ダーティーペア』なんぞを紹介してんだもの!
 しかもその受験生を血迷わせる過激な語り口が絶品の一言、と来る。
 十数年前、当時僕とほとんど口をきかなかった妹が「兄貴、これ凄いよ」とわざわざ見せに来た号では、なんと『愛より早く』を取り上げていた‥‥。

 ここに挙げた物語のほとんどは、内容的に出版が困難なものばかりである。何しろ佐野氏のさる連載に至っては、主人公に知的障害者のランク分け(いわゆる◯痴、◯愚、◯鈍)なんぞを公言させているのだ。逆にいうなら、子供向けの読み物世界で連載とは、規制が少ない一種の戦略的形態なのかもしれない。もしかしたら、当時はそうだった、というべきかもしれないが。
 ともあれ70年代初頭は、少年漫画や変身ものと並んで、この種の連載小説が、陰ながら児童文化を担っていたのではないか、と僕は思っている。

 最後に久保村・佐野両氏の物語について、出版されているなどの情報をお持ちの方、ご一報くださると嬉しいです。

(和田 鴉)

<完> <第1回を読む>

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