ダイナ、
松竹は救っても。

『ウルトラマンティガ & ウルトラマンダイナ〜光の星の戦士たち』がついに公開された。いろいろとごたつく松竹にとっては、寅さん以来の大ヒットで関係者一同、大喜びだそうだ。などということはともかく、なんだかんだ言いながらも、初日に観に行ってしまう自分が可愛かったりする。ただし、行ったのが地元の「船橋ららぽーと松竹」というあたり、なめていると言うか何と言うか‥‥。それは大きな間違いだった。迫力不足で、多少醒めた鑑賞姿勢になってしまった。このことは、先にお断りしておく。


■またも着地失敗

 映画開始しょっぱなから始まる戦闘シーン。いきなり観客の心を掴む。その後の流れも悪くない。「ダイナ」らしい人物の描写、「ティガ」と「ダイナ」の世界をしっかりと繋ぐキーワードを配した台詞などもよい。そして、2度目の戦闘シーン。ここまで観客たちは、ぐいぐいと引き込まれて行く。
 しかし、次の場面で、子供たちの心は、早々に離れた。戦闘時に負傷したマイ隊員(山田まりや)の病室シーン。そして、失意の主人公アスカ隊員(つるの剛士)とイルマ参謀(高樹澪)の会話。大人には、好いシーンなんだけどなぁ。ここで飽きるのは、子供の方が悪い(無茶な)。とはいえ、子供たちの心は見事に次の戦闘シーンまで、しばらく戻らない(涙)。そして、案の定、戦闘シーンになると、しっかりと戻ってくる。子供の生態を改めて思い知らされた気がする(苦笑)。
 この戦闘シーンは子供ならずも燃える。リョウ(斉藤りさ)機のビル突っ込みの特撮などは、思わず「おおっ!」と声が出てしまったほどだ。その後のダイナ勝利、そして一転の大ピンチ。続くティガ復活までの流れは、理屈はどうあれ、感動できるものはあった。
 しかしね‥‥。
 「ティガ」にも言えたことだけど、着地バランスが悪いんだよなぁ。
 肝心の最終決戦が燃えない。エピローグが冗長。内容の好き嫌いは置いておいて、ひとつの映画作品の完成度という意味では、今作と同様に小中和哉監督作品である昨年の『ウルトラマンゼアス2』に軍配があがるんじゃないだろうか。
 『ゼアス2』の興業成績が3万人とかで、今回が10万人に達しそうだと言うことで、スポーツ紙でも「ウルトラマン、松竹を救う!」なんてデカデカと出ていたけどね。あくまでも、「ダイナ」放映中という時期的なものだよ。




■希望はあるのか?

 何が問題だったのかは、はっきりとしている。「ティガ」の出演者の扱い方だ。
 ダイゴ(長野博)とヤズミ(古屋暢一)のジャニーズ組が大人の事情で参加できないのは、仕方ないとしよう。
 しかし、他のメンバーの劇中への整合性のとれた組み込みは、充分に可能だったはずだ。エピローグにだけ出したって、それまでのストーリーにまったく関与していないんだから、いくら好きなキャラクターであっても、この作品の中では「あんた誰?」ってことになってしまう。実際、この冗長なエピローグで劇場の子供たちは完全にだれこけてしまっていた。
 尺的に、スケジュール的に無理があったのであれば、むしろこの旧メンバー再会シーンは、取っ払ってもらった方が、好かった気までする。まさに小うるさいティガファンの為に「取ってつけた」という感じで、むしろ嫌みだ。
 製作者側に、決して悪意がなかったということは理解できるが、あのシーンのおかげで、一本の劇場作品としてのバランスが、すっかり壊れてしまった。そもそも、ティガとダイナの共闘シーンのカタルシス不足という問題もあるのだが。
 観終わった後、強引にプラス思考で考えたのは、「これは、あくまでもダイナ後半のためのブリッジである」ということだ。ダイナ世界で、「ティガ」の登場人物を再登場させる上での「顔見せ」ということ。そうとでも思わなければ、やりきれない。
 ただし、この納得の仕方が効力を発揮するのは、ダイナ後半が、それを受けるだけの作品となっていることが条件となる。最近、妙にリップサービスの善い若社長率いる円谷プロ。彼の言葉が期待させる「ダイナ」の後半戦は、はたして、どのようなものになるのだろう。
 「ティガ」と「ダイナ」が明らかにつながりのある作品となった以上、「ティガ」にはまった大人としては、見守る他ないのだ。

(蓮見季人)


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