'80s BOYの記録(4)
80年代前半の男性アイドル歌手再考

〜「サンデーズ」〜

 前回、紹介した男性歌手の顔ぶれをみて無視できないのは、「サンデーズ」の存在だ。サンデーズとは、74年から86年まで放映されたNHKの歌謡番組『レッツゴーヤング』のレギュラー出演者の総称。「歌って踊れてしゃべれる歌手の育成」を目的に、芸能プロダクションが推薦する16歳から19歳までの新人を対象にオーディションでメンバーが集められていた。77年4月の番組改編期に都倉俊一が司会に起用された際に、結成。当時の番宣でレギュラーたちのグループ名が公募されたことを覚えている。
 初代メンバーは、子役俳優として、またキャロライン洋子の兄としてすでに知名度の高かった黒沢浩を筆頭に、前年デビューの太川陽介未都由、放送開始直前に狩人としてデビューした加藤邦彦・高道兄弟、そしてデビュー前の川崎麻世の6人。先の番宣のグループ名公募のやりとりの中で、先輩格の黒沢が「黒沢浩となんたら‥‥」などという例を出して、ひんしゅくを買う場面(もちろんNHKなのでたぶん台本通り(笑))があった。

 半年後の10月からは、五十嵐有紀香坂みゆき天馬ルミ子の3人か加わり、後の男女混成のスタイルとなる。翌78年には、すでにスーパーアイドルとなっていた狩人が都倉に加わるかたちで司会に格上げされ、未都、香坂と入れ替わりに渋谷哲平倉田まり子が加入する。
 79年になると司会が平尾昌晃と太川陽介、榊原郁恵にバトンタッチ。黒沢、五十嵐、天馬が去り、山崎誠水上卓フラッシュ(結城純、江里奈譲、五十嵐良)、佐藤恵利越美晴が加わる。
 後に「サンデーズに入ると売れない」という定説が生まれるわけだが、たしかにこの年に加入したメンバーを見ると、細野晴臣に見い出されて独自の路線を築いていったコシミハル以外は、あっという間に消えてしまっていることがわかる。
 しかし、狩人の大ブレイクや川崎麻世のブロマイド・プリンス化を考える上で、全国区としての『レッツゴーヤング』の影響力を無視するわけにいかないだろう。もちろん、太川陽介の「Lui-Lui」や渋谷哲平、また後にメンバーとなる堤大二郎、新田純一が、サンデーズに加入していなかったら、もっと売れていたのか?と考えると、少々疑問だ。

 そして、80年。司会の榊原郁恵が石野真子に交代するとともに、水上、フラッシュ、越が去り、替わってあの二人が加入する。そう、田原俊彦松田聖子だ。おっと、藤慎一郎浜田朱里も忘れてはいけない。
 田原俊彦と松田聖子の登場によって、アイドル歌謡の構造は、明らかな変化を起こした。このことは誰もが認めるだろう。その構造的変化は、もちろん『レッツヤン』にも影響を与える。翌81年4月には、都倉〜平尾と続いた作曲家枠が外れ、すっかり司会業が板についた太川を軸に、田原、松田が司会に昇格。サンデーズは、川崎を残すのみで一新されるのだ。
 この年は完全に「司会」が主役という印象で、サンデーズは歴代メンバーの中でもかなり個性的な人材が揃っていたにもかかわらず、田原、松田というスーパーアイドルの影に、実質以上にマイナーなイメージが付加されてしまったように感じざるを得ない。
 この割りを食ってしまった新メンバーは、堤大二郎新田純一ひかる一平山田晃士沢村美奈子坂上とし恵日高のり子川島恵田口トモ子の9人。この内、沢村は契約上のトラブルで早々に脱退。また、1年後には、山田と田口が脱退するのだが、ここで残ったメンバーの名を見ると、いかにシブトいメンツが揃っていたかが分る人には分るだろう(私がサインを持っている(笑)川島恵を除く全員が、現時点でも芸能活動を続けているのだ)。ちなみに、資料には川崎麻世の名があるのだが、個人的には新たなメンバーと彼がいっしょにいたという記憶がない。
 この80〜82年の構造的変化こそ、この連載で語りたい核心ではあるのだが、この項は、以降のサンデーズメンバーの変遷のみを記して終わることにしよう。

 上記の体制は82年10月まで続き、サンデーズとしては、はじめてのメンバー総入れ替えが行なわれる。新メンバーは、植草克秀今井信湯川友晴(翌年5月に山口健次と交代)、小出広美横田早苗佐久間レイ橋本清美山本誉子。司会も太川陽介と石川ひとみという、ある意味で純然たる司会コンビとなる。
 84年4月に2度目のフルメンバーチェンジで、麻見和也中村茂幸矢吹薫山本陽一新井由美子太田貴子高橋美枝千葉湖吹美成清加奈子山口由佳乃に。翌85年5月に麻見、矢吹、千葉、成清、山口と入れ替えに大沢樹生保阪尚希長山洋子が加入。このメンバー構成を最後に翌86年4月の番組終了とともに、サンデーズはその歴史を閉じた。


参考文献:
『グラフNHK』(1983.6?)(切り抜きにより詳細不明)
『よい子の歌謡曲 No.11』(1982.12)
『別冊GON! 平成タコTV』(ミリオン出版 99.10.15)

(ピーター・レン)


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