P.S. Dear Berangere
アナン ストリート

 それから僕は、いくつもの街を訪れ、様々な人々を見てきました。かつての僕に、よく似た人たちも、たくさん見かけました。

 湿った風が 髪を這う
 舞い上がる飾衿布に 君は顔を顰める
 オフィスのパンチノイズ 逃れても
 夜の帳 行く宛てなく
 店先のシャッターばかり 鳴り響くよ
 どこから来たの? 誰ひとり答えられない
 ヒールに響く 都会の憂鬱を

 花束を抱えた日々は いつ
 胸の紙袋 忘れられた幸福
 ただ急ぐ自動車の河を渡る
 岸辺の群れ 紛れ込むよ
 どの表情も 匿名の溜め息落とす
 どこにいるの? 誰ひとり答えられない
 ライトが映す 都会の憂鬱を

 気紛れな電話番号 話し込む偽り声
 間違いだらけの珈琲の香り
 ガラスの影 語りかける
 もう何も 問うことなどなくなった
 どこに行くの? 誰ひとり答えられない
 どこに行きたいの? 誰も答えられない

 何もいわないで 何も訊かないで‥‥

(C)hasmi toshihito 1986,1995


視聴会録
出席者:井上竜夫(I)、佐久間充(S)、蓮見季人(H)

 (イントロのギターソロを聴いて大笑い)何の曲か分らなかった。
 泣いてます。
 このアルバムん中で、一番いいギターソロだよ。自画自賛。
 エンディングで盛り上げようと思っていたらソロの入る予知がなくて、しょーがなしに頭ソロになったという経過を、私は知っている。
 桑名正博(かっこ当時)が出てきそう。
 桑名というのはいいアレかも知れない。当初想定していたトッド・ラングレンっぽくは、ならなかったね。
 最初がいいな、この曲。イントロ、インパクトあるよね、ものスゴク。
 充の間奏ソロも好きだよ。竜夫からは絶対出てこないフレーズでしょ。
 ずっと前(鈴木)政光に言われたんだけど、俺の曲、イントロはいいけど、他はダメだって。
 この詞は、もともとパロディのつもりだったんだよ。だけど井上君のメロディがなんかはまっちゃってて、フェイバリットソングになっちゃった。この手の曲って、大っ嫌いだったんだけど。ここに都市社会楽の萌芽があるのかも知れない。
 実はこれ、四和音で書くための習作だったんだよ。生まれて初めて四和音で書いた曲。
 (A面を聴き終えて)蓮見君のアレンジが意外にシンプルだよね。ソロの反動かな。竜夫君の方が凝ってる。

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