BORN AGAIN BEHIND
THE WALL OF SLEEP

〜オリジナルBLACK SABBATHの威容〜
Vol.2



(はじめに‥‥)
 唐突に8月をもって再結成の一瞬のきらめきが消えてしまう事になった。来年頭には、現在のメンバーによる新作がリリースされる予定で『LAST SUPER』というライブ・ビデオも現在リリースされているが、本来、来日を見込んでの連載だっただけに、少し的外れな展開になりそうな雰囲気である。
 当初(長さもハンパじゃないので)これなら、Webに一切流してしまおうか‥‥とも思ったのだが、来年の新作リリースまでは「ばるんが」誌面でも連載しようと決めたので、オリジナルBLACK SABBATHの暗黒のオーラにもう少し身を委ねてみて欲しいところである。‥‥しかし、無念なのは来日しないという事実だ。
 70年代でさえ、オリジナル・ラインナップでは来日していないんだぞ!(クスリのせいだけどね。)‥‥だが、潔いといえば潔いのだ。「そうは安売りしないぜ。」といいたげなムードがある。新作を聴いてくれ、というのもかっこいいしね。まあ、どちらにせよ個々のメンバーがライブでは過去の曲をやるだろうし、終わったわけではないのだから。


 1970年2月13日の金曜日にデビューしたBLACK SABBATHは、元の名をEARTHといい、もともとブルースやジャズをプレイしていたバンドであり、1st『BLACK SABBATH』でも即興性の強い「The Warning」にはそういった香りが漂っているが、やはりタイトル・トラックでありバンド名でもある1曲目は、彼等が独自に生み出したヘヴィ・メタルのリフが全編を覆い、ジャケットの不気味な演出とともに当時のロック・シーンに強烈なインパクトを残した。
 その後、バンドの代表曲「Paranoid」をタイトルにした2ndアルバムをリリースし、「War Pigs」(本来はこのタイトルのはずだったが、当時のベトナム戦争に対するレコード会社の配慮により却下された)「Iron Man」といった曲は永遠に語り継がれるSABBATHスタンダードとなった。

 3rd『MASTER OF REALITY』は、80年代には「散漫な出来」と不評であったが、現在ではコアな層の支持により最も彼等らしい傑作として名高いが、実のところコレが聴けるか聴けないかで、その人のこのバンドに対する相性は決まってしまうであろう。スロー・テンポで気怠いリフが蔓延し、「Sweet Leaf」「Chidren Of The Grave」「Lord Of This World」「Into The Void」等のコアなナンバーで埋め尽くされている(『REUNION』は、これらの曲が中心となっている)。
 4th『BLACK SABBATH VOL.4』は、80年代にあっても名作の誉れ高く、現在でも『MASTER〜』とは別の意味で傑作とされているが、それはより楽曲が洗練された感があるからで、「Wheels Of Confusion」「Under The Sun」の大作志向、「Tomorrow's Dream」のポップ性、バラード「Changes」そしていかにもなナンバー「Snowblind」(アルバム・タイトルはまたしてもこの曲名が却下された結果である。コカイン中毒の意がある)などバラエティに富んだ内容である。

 続く5th『SABBATH BLOODY SABBATH』はある意味、このオリジナル・ラインナップによるバランス感覚の限界を示しており、YESのKey.リック・ウェイクマンをゲスト・プレイヤーに迎えたその多様な楽曲群は、非常にハイ・テンションである。タイトル・トラックや「A National Acrobat」「Killing Yourself To Live」といった従来のスタイルの中にあらゆる実験的なアプローチ(例えば、アイオミがフルートを吹いたり)が散りばめられ、アイオミのビジョンに対してバンドの資質が対応出来る限界であったと解釈して良いだろう。
 それ故、2年のブランクがあったにもかかわらず、完成した6th『SABOTAGE』は名曲「Hole In The Sky」、80年代ヘヴィ・メタル、スラッシュ・メタルに強い影響を与えた「Symptom Of The Universe」、大作「Megalomania」などとてもクオリティが高いにもかかわらず、オーバー・プロデュースぎみで、バンドの一体感は減退していった。
 それは、7th『TECHNICAL ECSTASY』、8th『NEVER SAY DIE』でも同じことであり、それが現在までの低評価に結びついているようだが、このオリジナル・ラインナップ最後の3枚が間違っても駄作ではないことは、その曲のクオリティの高さが物語っていると思う。それにもう一つ、アイオミは最高のリフ・メイカーであると同時にマルチ・プレイヤーであり、コンポーザーとしても豊富なアイディアを持っている事に気づいている人間は少ないのではないだろうか?

 さて、9th『HEAVEN AND HELL』以降の彼等は別次元ということにして(本当はそうもいいたくないのだが‥‥特にロニー・ジェイムス・ディオ在籍期に対して大きな偏見を持っている向きが多いと思われるから‥‥)、このオリジナル・ラインナップというのは、80年代まではまさにヘヴィ・メタル・シーンにおいて影の文化であった。しかし、90年代に入ってその認識は一変する。‥‥それは何故だったのか?

つづく:藤井 宏治)


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