Take me Higher, TIGA!


■ティガはウルトラマンか?

 昨年9月から放映されている「ウルトラマンティガ」。私がその存在を知ったのは、第一回放映当日の昼だった。新聞のテレビ欄に紹介されていたからだ。
 主演がジャニーズ事務所のタレントで、役名が「ダイゴ」という珍しいのによく聞き慣れたもの(本誌発行人の名)。そんじゃ観るべぇかと思ったものの、その時間には、忘れてしまっていた。その後も、土曜日は何かと予定が入り、最初に観たのは、11月になってからだったろうか。
 まず、第一印象は、デザインの「ウルトラマンらしくなさ」だった。なんとティガは、お馴染みレッド&シルバーのツートーンにプラスして、ヴァイオレットが大胆に施されている。「おいおい、流星人間ゾーンじゃないんだから」という感じで、違和感があった。
 それはさておき、最初に考えたのは、「もう、ウルトラマンというのは、一般名詞なんだ」ということだ。20年前なら、ミラーマンとかファイヤーマンとか、別の名前をつけたようなものも、すべてひっくるめて現在はウルトラマンなのだと。そういう、うがった見方で納得してみた。
 しかし、回を重ねるごとに、この考えを破棄することとなった。「ティガ」こそ、「現代のウルトラマンの理想型」なのだった。



■志あればこそのクオリティ

 「ティガ」は、「最初のウルトラマンとウルトラセブンしか認めない」人にも絶賛されているらしい。かくいう私も「しか」というほどかたくなではないが、その一人といってもいいかも知れない。そういう人種をも納得させるものが「ティガ」にあることは確かだ。
 「ティガ」を私なりに一言で形容すると、ウルトラマンの「ヒューマニティ」とセブンの「SF作品としての良質さ」を兼ね備え、かつ現代が求めるものを的確に表現した作品ということになる。西暦2007年の世界観をきちんと作り上げ、そこで「生きている」人々の姿をきちんと表現している。ウルトラマンの生みの親・金城哲夫氏の弟分ではなく、彼らに育てられた子どもたちの世代が、親から授かったものを、真摯に次世代へ伝えようとしていることが感じられるのだ。プロデューサーの一人、31歳の笈田雅人氏は雑誌のインタビューで「人類が次のステップへ進むための支えになるような作品にしたい」と語っているが、この志あればこその、このクオリティだろう。



■31年目の成熟

 昭和四〇年代ではなく「今」だからこそ表現できる演出面のクオリティも忘れてはならない。
 まず、第一に思いつくのが、特撮技術の進歩だ。若干CGくささが鼻につく箇所はあるものの、テクノロジーを当たり前のものとして、とてもさりげなく使っていることに好感が持てる。
 特撮・アニメに詳しい知人によれば、これらの思い切りのよさを可能にしたのは、「ガメラ」と「エヴァンゲリオン」の成功があってのものらしいが、何はともあれ、これらの作品の受け入れ側の成熟があってこそのクオリティだろう。
 次に、本編ドラマの部分だが、ともすれば子供向けを意識しすぎてしまいがちだった状況説明や心理描写、セリフ回しなどが、実にスマートに表現されている。ここでも「さりげなさ」が、より深く観るものに働きかける。子供は「感じ」て「吸収」する生き物なのだ。大人の鑑賞に堪えうるものこそ、子供が観ても「何か」を心に残すのだ。
TBSにて。ティガとダイゴ隊員(道楽堂番頭)
 色分けされたデザインも、見慣れてみると、その良さに気づく。先入観を捨てて観れば、実にスマートなグッドデザインだ(従来のウルトラマン型のパワータイプと比較すればすぐに分かるはずだ)。

 この文章を書き始めて、「ティガ」に対する思いをこのスペースで言い切ることの不可能さに気づいた。特に、3月に入ってからの毎回の質の高さは、ただ賞賛するしかない。とにかく3回以上観たら、少なくともウルトラマンをちょっとでも好きだったことがある人ならば、必ずそのよさが分かると思う。前述の笈田氏によると、今後、さらにテーマを明確にしつつ、最終話に向けて突き進むようなので、だまされたと思って、ぜひ注目して欲しい。

(蓮見季人:「ばるんが通信」No.20,1997.04.01より)

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