私が愛した
ウルトラマンティガ



■ラストスパート

 「ウルトラマンティガ」の放映が終了した。本紙前号、前々号で勝手に盛り上がりまくった手前もあるので、その総括をしておこう。
 前号発行直後に放映された45話「永遠の命」は、実質上、最終章の幕開けといえるものだった。当初のメインライター(1・2話の担当)右田昌万氏の久々の登板で、超古代文明が滅びた謎を描く重要なエピソードであり、かつ「麻薬による快楽=現実逃避」という無視できないテーマを扱った作品だったが、残念ながら30分でまとめるには無理があったと言わざるを得ない。
 右田氏はその後、一般公募怪獣と京本政樹を「出してあげる」ための46話、48話を担当するが、これが「なんだかなぁ」なものだった。「なんだかなぁ」は、もう一本ある。ウルトラシリーズの重鎮OB上原正三氏が執筆した49話「ウルトラの星」だ。「もう、ウルトラは書かない」と宣言した氏を強引に説き伏せて実現したものだが‥‥。「ティガ」と「初代ウルトラマン」を共演させるには、絶妙の技と言えなくもないが、「ティガ」にはまった身としては、「他でやってよ」と言いたくなってしまうものだった。この間、素直に好かったと言えるのが、「ティガ」でデビューし、後番組「ダイナ」のメインライターにまで上り詰めた長谷川圭一氏による47話「闇にさようなら」だけだというのは、この時期に来て、ちょいとツライところだ。
 そして、最終章3部作に突入。小中千昭氏を中心に、クトゥルー神話大系を取り入れた壮大な物語だ。
 50話「もっと高く!〜 Take Me Higher !〜」は、主人公・ダイゴとヒロイン・レナの切羽詰まった心模様に泣き泣き。小中氏曰く「正体を明かしてなお、その先を描きたい」との意図のもと、この回でレナがダイゴ=ティガと気づいていたことが判明する。続く51話「暗黒の支配者」では、女性隊長イルマも気づいていたということが判明。イルマの「ティガ観」の変容を語るくだりもぐっとくるものがあった。そして、世界を闇に包む邪神ガタノゾーアの前に光を失い石像と化すティガ(第1話で光となったダイゴが巨人石像と融合して復活したのがティガなの!)。さて、人類の運命はいかに?というところで、最終回へ‥‥。



 ここまで盛り上がったところで、8月28日、私は後楽園で行なわれた「ウルトラマンフェスティバル」へ。そのレポートは、下のコラムで。



■クライマックス

 こうして、盛り上がり最高潮に達したところで、ついに最終回「輝けるものたちへ」。
 一年間のシリーズを通して登場した重要なキャラクターが続々と集結し、石像と化したティガを復活させるために、各々が「自分にできること」で協力しあっていく。とくに、最も好きなキリノ=マキオ(39話に登場)の思いもよらぬほどの活躍振りに、完全にブラウン管の中の世界に感情移入‥‥とその時‥‥。
 すっかり、かわされた(涙)。
 後日、雑誌で読んだシナリオの意図もよし。実際に放映された映像も美しい。その他すべて、ほとんどOK‥‥なんだけど、釈然としない幕切れに、心はもやもや‥‥(エヴァで被害に遭われた方の足下にも及ばないだろうけど)。
 結局ね、時間が足りなかったんだ。これまでもよく「ティガ」は詰め込みすぎで、30分に収まっていないという批判があったけど、スタッフの熱すぎる情熱は、30分1話完結の「ウルトラ」の枠に収まらなかったんだな。思い返すと、ほんと〜に「オシイ」作品が多かった。ホントは、どんな条件であれ、収めるのがプロなんだけど。
 さらに、シリーズ構成の難。当初2クールの契約が4クールに延びたり、16年振りのテレビシリーズによる手探り状態での製作だったとは言ってもね‥‥。これがきちんといっていたら、どれほど素晴らしい作品になったことか、と悔やまれる(最終章は、1クール使ってやるだけのボリュームだよ)。
 確かに、業界関係者が口を揃えるように、「ティガ」の質の高さは「奇跡的」だったと思う。ただし、それはこれまでの円谷作品、特撮TV作品を取りまく現実の上でのオハナシ。でも、「ティガ」は、そんな枠をとっぱらって「奇跡的作品」になれたポテンシャルを秘めていたと思う。もし、ディレクターズカット版のようなものが創れるなら‥‥「もっと高く!」などと、つい思ってしまう、そんな夏の終わりだったのでした。



■エピローグ

 この初稿の執筆後に、幸運にも川崎郷太監督と小中千昭さんに、それぞれお話しを伺う機会に恵まれた。彼らが、いかに「ウルトラマンティガ」という作品に情熱を注がれていたか、それが一視聴者の比ではないことが、よく分かった。
 ただし、ある関係者からのお話しを聞くにいたって、この「ティガの奇跡」が、想像以上のものだったことも分かってしまった。「ティガ」の宿敵は、キリエロイドでも、ガタノゾーアでもなかった。それは、円谷プロそのものだったのだ。
 ここで私が聞き至った内容をお伝えすることはできないのだが、それはそれ。彼らの妨害をかわしつつ、あれだけの作品を作り上げた現場スタッフとスポンサー各社に、改めて敬意を表したいと思う。ティガの7年後という設定の後番組「ウルトラマンダイナ」は、はっきり言って、期待薄である。しかし、スタッフたちのレジスタンスの道は残されている。しばらく静観してみることにしておこう。
 16年、いや、3000万年の眠りからの「ティガ」の目覚め、そして活躍は、まさに「奇跡」だったのだ。

(蓮見季人:「ばるんが通信」No.22,1997.10.15より)

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