TIGA MANIACS 発症中


■こんな私に誰がした?

 続けるまいとも思ったのだが、それでは自分に嘘をつくことになってしまう。なぜなら今、私の生活は、ティガ一色に染まっていると言っても過言ではないからだ。GW以降のひと月半、生業の鬼畜なまでの忙しさに、せっかくの新居にいる時間も、ほとんどなかった。なのに、その貴重な時間を電話線の向こうの、まだ見ぬ仲間たちとの文通に費やしてしまう。そう、私は禁断の領域、パソ通会議室に入り込んでしまったのだ。だって楽しいんだもん。
 もちろん、その会議室は「ウルトラマンティガ」のものだ。ここの書き込み量は、半端じゃない。多くの人がパソ通に持っていると思われる閉鎖性も感じない。人間的にバランスのとれた人たちが多く、彼らの文章を読んでいるだけで、共感にうれし泣きしてしまいそうなこともある。なにより、自分が発した言葉に、どんどんリアクションが来ることが嬉しい。本当に「コミュニケーションをとっている」という実感が湧いてくるのだ。
 そんなバックグラウンドを得たこともあって、私の「ティガ熱」は、さらに拍車がかかってしまったのだ。それでは、これまでの「ティガ」を振り返り、私がはまった理由を探ってみよう。



■前号の原稿を書くまで

 第一クールは主演の長野博氏のスケジュール問題が怪我の功名となって、他の隊員たちのキャラクターを浮き彫りにする作品群が揃った。このため「群像劇」が可能となった。これが第一の理由だ。私は、群像劇が大好きなのだ。
 そして第二クールは、「ティガ」の世界を拡げるバラエティに富んだ作品群がずらり。そんな中で、年明けの18話「ゴルザの逆襲」、19・20話「GUTSよ宙へ(前・後)」と作品世界に深みを与える作品も登場。それらに「やや、これはただ者ではないな」と思いはじめた。
 ただし、この時期には、まだ冷静でいられた。それが、第三クールを迎える頃になると、完全にはじけた。当初の30話までの契約から52話までの番組延長が決まったであろう時期に、強烈なテーマ性の強いエピソード群が大挙して現れたのだ。25話「悪魔の審判」、28話「うたかたの…」など。この時点で、前号の原稿となったわけだ。



■>その後の病状悪化

 それから3ヶ月。この間に、私は前述の「ティガ会議室」と出会うことになる。その直後、メインライター・小中千昭氏の手による前後編を経て、あの実相寺昭雄監督作品が2作(ただし、大失望)。その2作に挟まれる形で、28話を手がけた今シリーズ最大の収穫とも言われる若手監督・川崎郷太氏の作品が登場。とくに39話「拝啓ウルトラマン様」は、大傑作だと断言したい。
 この原稿を書いている7月6日現在、昨日とその前週と前後編で放映された43話「地の鮫」、44話「影を継ぐもの」の興奮が収まらないでいる。定番の「偽」モノなのだが、これが「ティガ」のテーマを浮き彫りにする重要な役割を与えられて登場した濃い〜作品だったのだ。



■完全燃焼させてね!

 で、結局、何が僕をこんなに惹きつけたのか。「ウルトラマンが好きだから?」‥‥それは違う。僕が好きなのは「ティガ」でしかない。
 たいした取り柄のない青年ダイゴと、変身してもあまり強くない「ティガ」。キリスト教的悪魔のように彼を試しに現れる者たちは、「救い様のない人類」を強調する。けれど、それでも希望を捨てず、信頼できる仲間たちと共に立ち向かう地球生まれのウルトラマン「ティガ」。絶望の中の希望。それを実現するのは、小さな個人の勇気。僕は「ティガ」にそんなメッセージを感じ、そして、共感する。
 しまった。「ティガ」を語ると、熱くなってしまう‥‥。基本的に一話完結で、脚本も演出も複数の手による作品をこんなに単純に語れるわけはないし、毎回が100点をつけられるわけでもない。
 でもね、何を差し引いても、やっぱり「ティガ」は、僕にとってはツボツボなのよ。何にしても、残りあと8話。完全燃焼させてね!

(蓮見季人:「ばるんが通信」No.21,1997.07.07より)

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